2014年08月07日

セミの羽化について思うこと

昨夕はセミの羽化観察会でした。
毎年、真夏の日比谷公園で開催している恒例行事。
主催はNACOT(NACS-J自然観察指導員東京連絡会)です。
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老若男女50名ほどの参加者をお迎えしました。
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暗くなると、セミの幼虫が地上に出てきて木に登り、羽化します。

セミの羽化は、幼虫から直接、成虫になる不完全変態です。
ほかの昆虫の羽化に比べて、観察しやすく、短い時間で観察できます。
羽化は美しく、不思議で、神秘的です。何回見ても、見飽きません。
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ツクツクボウシの羽化

観察会中、子どもたちが少し騒いでいました。
「この幼虫、なんかおかしいよー」
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見ると、一匹のセミの幼虫が、たくさんのアリにたかられて
弱っていました。いや、弱っていたのでアリにたかられたのかもしれません。
その時、案内していた仲間の指導員が「かわいそうだねー」と言いました。
私は、その言葉に違和感を覚えました。なぜなら、それは自然界で
ごく当たり前の営みであり、そういうものだからです。
私は「かわいそうなのではなく、アリの役に立っているんですよ」と
口を出しました。仲間は「5年も待って、やっと地上に出たのに」という。
私は「5年間生きて、他の生き物の糧になって生命をまっとうしたのです」と
言い直しました。子どものそばにいたお母さんは、
「そういう見方もできるんですね」と言いました。

自然界にはセミを食べる生き物がたくさんいます。
夕方になると、どこからかヒキガエルが出てきます。
暗くなると、セミの幼虫が地上に出てくることを知っているのです。
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今夕は大勢の人がいるからか、とまどっていたアズマヒキガエル

木に登っていた幼虫がキイロスズメバチに襲われ、
何回も何回も体をもぎとられていました。
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スズメバチは何往復もしていました。

どちらも、他の生き物の糧となって天寿をまっとうしたのです。
アリやカエル、スズメバチだけではありません。
セミに寄生するヤドリガ、ハシブトガラス、シジュウカラや
ヤマガラなどの小鳥、タカの仲間のツミ、土の中ではモグラ、
細菌類、冬虫夏草のセミタケなど。幼虫も成虫も、多くの生き物と
つながり、その糧にされているのです。
すべての幼虫が無事に羽化できてしまったら、これらの生き物たちが
困ることになります。生態系のバランスが崩れてしまうのです。

無事に羽化する幼虫、他の生き物の糧になる幼虫。両方いるのが、
ごく当たり前の自然界の営みです。
今日の観察会のテーマはセミですが、セミを主役だと考えたり、
えこひいきするのは間違っているのです。

5年間生きてきたことを無駄にしてしまうのは、観察会中に
私たちが幼虫を踏み殺してしまうこと。それこそ、かわいそうです。
羽化の観察会では極力、足元に注意して移動しなければなりません。

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短い時間に、身近な環境でこれだけのことを学べるのです。
とくに子どもたちには、こういう自然観察の経験が絶対不可欠です。
生命や生き物、自然の大切さと尊さをライブで知ることができるからです。
若年層の猟奇的な事件が後を絶たないのも、こういう経験が不足している
からかもしれません。私たちの活動には大きな責任と意義があるのです。

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美しく、不思議で、神秘的なセミの羽化は、
多くのことを教えてくれます。

ジョー
posted by 染井六 at 16:09| 東京 ☀| Comment(0) | 昆虫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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